ラーメン物語5

バックヤードで店長から
改まって言われた


正社員にならん?


唐突に言われた
ホンマに予想外であった
まだ入って1ヶ月程で
仕事もやっとこさ慣れてきたところでの
まさかの正社員にならんか?だ


俺は店長に


申し訳ありませんが
正社員にはなりません



キッパリと断った


店長も
そうやろな
みたいな顔をして
「何かやりたい事とか、なりたい仕事でもあるん?」
と聞いてきた


俺は
いえ…特には…

答えた


正直グッサリきた


確かに
当時の俺には
明確な夢や目標は無かった
やりたい仕事も無く
何となく食いつなぐ為に
ラーメン屋のバイトをしていた


店長は
こういう飲食店の仕事は
みんな自分の店を持ちたいって思いながら
働いてるの
そこは一般企業と違う所やねん
もちろん僕もそういう野心を持って仕事してるで


店長は当時29歳
真摯に仕事と向き合ってやっているのは
俺でも分かる
もちろん俺もバイトとは言え 
仕事は真剣に取り組んでいる


店長は
「まあ考えといてよ」
と言って店に戻っていった


やりたい事かぁ…


自分の今の生活は
ラーメン屋のバイトを
10時〜17時までの週5〜6日
家に帰れば
疲れ果てどこにも行かずに寝る
休みの日もほぼ寝てる
週末はたまに友達と夜に遊びに行く位
当然お互い稼ぎが少なく
遊びなんて
カラオケ行くかファミレスでしゃべり倒すか


ラーメン屋のバイトは充実していた
しかし
このままでいいのか
店長からの言葉


何かやりたい事あるん?


この言葉が
何故だか重く伸し掛かった