ラーメン物語14

19時が過ぎ
本格的にお客さんが入ってきだして
一気に忙しくなってきた
ディナーはランチと違い
複数客が多い
一気にオーダーが入ってくる
そしてサイドメニューの注文が多い
ファミリー客が多く
お酒を飲むお客さんが多いからだ
そして
ランチと違い回転率も遅く
客数の割に
それほど忙しくない
それより少し気になることがあった


店長のテンションの高さである


ほぼホールにいるのだが
やたらと声がデカく
とにかくテンションが高い


たまに厨房に来ては飲み物を飲むのだが
コーラを飲む量がとにかく多い
汗もかなりかいている
店長とはあまり仕事した事ないのだが
店長こんなんやった?って
思い始めた


それ以外は特に気になる事などなかったので
俺は仕事をこなしていた


深夜も2時が過ぎ
お客さんもまばらになり
閉店作業に掛かり始める


クロージングというやつである


いつもは散らかす側だが
今回は片付ける側
こればっかりは教えて貰わないとわからない
クロージングをしながら
明日(厳密には今日だが)の営業の分のスープの仕込みを続けていく
スープはずっと火に掛けっぱなしだ
なので火加減には細心の注意を払わなければならない


ラストオーダーも取り終わり
本格的に閉店作業に取り掛かる


深夜3時に閉店を迎えた


閉店作業をしていた頃
「おーい、○藤さーん」
レジの前のカウンター席に座っていた店長に呼ばれる
「今からレジ締めとお金の計算の仕方教えるわ」
と言い
電卓と売上を記入する用紙とコインカウンターを用意している
コインカウンターとは


これ
コンビニで使っているのを見たことがあるのではないだろうか?
コイツラを使ってお金を計算していく
俺は隣で店長が計算しているのを見ながら
必要であればメモを取っていく
お金の計算をしながら
店長は言う
「○藤さん、マツウラの事好きやろ?」
思わず俺は
「え?」
と言ってしまった
「前から何となくわかってたけど、今日おんなじシフトでやってハッキリわかったわ」
笑いながら店長は言う
「なんでわかるんですか?」
俺が聞くと
「俺もいろんな店で店長やって、結構長いし色んな人間見てきたから何となくわかるよー」
豪快に笑いながら店長は言う
俺は
「あっ、でも付き合うとかそんなんちゃうんで!職場恋愛とかなったら迷惑掛かりますから」
店長は
「エエよー、別に○藤さんが真面目に仕事してるのは知ってるし。若い男女の事やねんからそういうのもあるよ」
うんうんと頷きながら店長は話す
続けて
「言うても俺の今の彼女も同じ店で知り合ったからね」
そうなのか
俺は聞いてみた
「店長は結婚しないんですか?」
店長は俺の7つか8つ上で
当時の俺が23歳だったので
30か31位だと思う
「一応一緒に住んではおるんやで」
と言ってきた
同棲か
何かエエ響きやなと思いながら
店長の話を聞いていた


「○藤さんは彼女おるん?」
と店長は聞いていた
「いや、いないですよ。もう3年位は」
20歳ぐらいまで付き合っていた彼女がいたんだが
それからは彼女らしい彼女はいない
店長は言う
「店で彼女作ったらエエやん」


は?


何を言ってるんだ?
職場で恋愛事なんて
ややこしい事この上ない
ましてや店長を張ってる人間から出る言葉ではない
「マツウラにフクモリにもおるし。好きなんイッタらエエやん」
なぜフクモリの名前が上がってくる
「フクモリは○藤さんの事好きやで。おらん時に良く言うてるわ」
は?
何を言ってる?
そんな事初耳である
「あの乳は見逃されへんで?とりあえずイッてみたら?」
ホンマにどうしようもない店長だ
半分呆れたが
あの乳は勿体無いな
そう思ってしまった


そうこうしてる内に
閉店作業は全て終え
みんなは帰り支度をしている
店長もレジの計算が終わったらしく
「じゃああがりましょうか」
と言ってきたので俺も帰り支度をする 


もう4時だ
まだ暗い


店長とバイト仲間に
お疲れ様でしたと
声をかけて家路に着く


彼女欲しいなぁ…


そう思いながら
車に乗り家に帰っていった

ラーメン物語13

初めての遅番勤務
俺が勤めているラーメン屋の基本シフトは
08:00〜17:00
11:00〜20:00
17:00〜04:00
これが正社員の基本シフト
俺はフリーターで
正社員並に仕事していたので
早番に充てられていた


ランチはタナカに任せて
遅番からの出勤
出勤してみてたら
店の光景が些か違う事に
少し戸惑う


いつもは一人で誰もいない店に来るが
今日は出勤してみたら誰かいるし
営業もしている


おはようございます


ここはいつも通り挨拶して
バックに入り
タナカとランチの様子を聞いてみる


「ランチどうやった?」
とタナカに聞く


タナカは
「いつも通りやったけど、○藤君おらんかったらしんどいし、まだ慣れんなぁ」


そうなんだ
今日から一人でタナカに任せてみたが
朝から電話が掛かりっぱなし
あそこの準備はどうやった?
仕込みの量はどうやった?
スープの手順はどうやった?等等
おかげであんまり寝てない状態で
深夜に入るのは
少し不安だった


それでも
何も無く営業を終えたので良しであろう


「明日は俺休みやからもう一日頑張ってな」
そうタナカに言ってバックに戻る


そこから店長と深夜の営業の流れとか
少し話し厨房に行く


深夜と言っても
まだ夕方なのでまだお客さんはまばらで
仕込みがメイン
仕込みをとにかく
せっせと終わらせていく


18:00前になるとアルバイト達も
続々と出勤してくる


おはようございますー


一人の女の子が出勤してくる


マツウラマミというバイトの子である
見た目はギャルだ


年齢は俺の一つ下でフリーター
元々ランチに入っていたのだが
今は亡きイモト氏が気持ち悪いという理由で
夕方からのシフトに入っている
なので顔見知りではある


「あれ?○藤さん夜に入る様になったのー?」
マツウラが聞いてくる
「とりあえず今日だけね、よろしくねー」
と声を掛ける


実はこのマツウラという女が
俺は少し気になっていた
要は
好きかもって事だ


バイト歴は半年程で
ランチに入っていた時は
人見知りもあってなかなか打ち解けられなかったが
仲良くなればコロコロと良く笑う
素直な良い娘である


イモト氏の気持ち悪さについて
たまに相談を受けていた


挨拶したら微笑みかけてくる
次の日休みなら「彼氏?」とか聞いてくる
用もないのにホールに来て話しかけてくる
その際に距離が近くてキモい
等等


その様子を目の当たりにしてたのだが
エエ子なので
無難にイモト氏と接していたのだ


そんな事もあり
店長にシフトの変更を申し出
夕方からのシフトに変わったと言うわけだ


マツウラと一緒に仕事出来るのは
嬉しいが
仕事なので手を抜くわけにはいかない
朝からの仕事とは全く手順も違うのだから


19:00前からお客さんが増えだす
ここからが本番だ
麺場に立ち本格的にオーダーをこなしていこう


初めてのディナータイムである

ラーメン物語12

裏口の前にいる男は
新入社員であろう


タナカである


しかもだ
出勤初日で
裏口とはいえ
店の前で
ウンコ座りで
タバコを吸い
靴はかかとを踏んでいる
しかも髪型はオールバック


どう見ても
ヤンキーだ
間違いない


漫画に出てきそうなヤンキー
平成のご時世に
こんなヤンキーがいるのかと
おそらく
学生時代の愛読書は
チャンプロードである
何なら今も愛読してるかもしれない
そもそもまだ売っているのか?


うわぁ…
ヤンキーが新入社員で俺の下に付くんかい
しかも同い年って
とにかく
裏口から入らないと仕事に行けないし
鍵も俺が持っている
実はコンビニと間違えて座ってましたとか
ハイセンスなボケを噛ます様な人間なら良いが


裏口に行き
彼と目が合う
彼は立ち上がり


「○藤さんですか?今日からお世話になります、タナカです」


低く野太い声で挨拶をする
流石はヤンキー


「おはようございます!ほんなら店に入りましょうか?」
爽やかに挨拶した


店に入り
いつもは一人で仕込みをしているので
誰かいるのは違和感を感じる


まず初めにやってもらうのは…


そう言いながら
仕事を教えていき
田中はハイハイと聞き
大事だと思う所はメモを取る
流石はヤンキーだ
気合の入り方が違う


これならすぐにモノになりそうやな


俺はそう思った
仕込みと開店準備も終わり
営業時間まで空いたので
二人でタバコを吸いに行く


「店長から聞きましたが、○藤さんはスーパーなバイトらしいッスね?」
タナカが言ってきてた


「そんな事ないで、ただ歴が長いってだけやで!誰でも出来るよ」


「そうッスか?デキル人ってかんじですけど?」
タナカは褒めてくる
流石はヤンキー
こういった上下関係には長けている
しかし
同い年もあるが
社員がバイトに敬語を使わせるのも
どうかと思い
「タナカ君、同い年やし敬語とかエエよ?しかも俺バイトやし。もっとフランクにいこうや」
タナカは持っていたコーヒーを飲み
「マジっすか?わかりました!これからはそうします」
タナカは笑いながらそういった
「オーケー!店開けよか!」
そう言って厨房に行き
ハルカに暖簾を出すように指示した


それから暫くして
俺とタナカでランチを営業し
タナカもだいぶ慣れてきて
もう一人で何とかなる位に間でなってきた


ある日
店長から話があった
「タナカ君もだいぶ慣れてきたし、一人でランチ任せてみようと思うんやけど?」
おっ
タナカも独り立ちか!
一緒にやってきた一人として少し嬉しかった


となると…?


「店長、じゃあ俺は?」
そうだ
タナカが一人で回すなら
俺がランチに入る必要は無くなる
どうするのか店長に聞いた


「○藤さんは深夜に一度入ってみようか?」
 
まさかの遅番に勤務か!
ウチの店の営業時間は
11時から深夜3時まで
閉店作業までしてたら
4時までの勤務になる


店長は続けて言う
「レギュラーで深夜にシフトインは無いけど、全ての時間の仕事内容を覚えて置いて欲しいんよ」
なるほど
「全ては今後の為やね!」
店長は笑いながら言う
どうしても社員にするつもりやな
絶対にならんけど
「じゃあ来週のどこかで一日入ろうか?」
店長はそう言い
俺はわかりましたと言った


何か良いように使われてる気がするが
深夜は時給500円アップやし
オイシイなと心踊らせていた


そして
深夜勤務の日が訪れた

ラーメン物語11

気がつけば
ラーメン屋のバイトも一年近くやっていた
やっている仕事も社員並
ランチは社員無しで
一人で仕込みから任され
ランチのバイトのシフト管理
材料の発注等も俺の仕事
時給も軽く1000円を超え
勤務時間も8時〜18時までなっていた
給料も社員位になっている


社員の一人のイモト氏は
いつの間にか辞めていた
かなり俺の事を鬱陶しがっていたし
相当嫌っていたからな
いらんヤツがおらんようになって
とても充実していた


しかし
このまま社員になるのは嫌だった


やはり飲食店の社員に旨味は全く感じない
仕事は楽しいが…


そんなある日
店長から話があった
「今度一人新入社員入れようと思ってるんやけど?」
へー
そんな話があるんやと
店長の話を聞いていた
「入社したのは先々月なんやけど、今は西宮支店におるんよ」
当時は支店が本店と西宮支店と自分が勤めている支店があった
西宮支店は芦屋西宮ラーメン街道として
当時はラーメン激戦区であった
西宮支店は何度もテレビや雑誌に取材されており
芸能人やスポーツ選手などが来る
有名な店舗だ
「確か○藤さんと同い年だと思うから、よろしく頼むわ」
わかりましたと言い
仕事に戻った


同い年の新入社員か…
立場的には難しいな
社員とバイトやもんな


まあどうにかなるやろー


そんな事を考えながら
日々の仕事をこなしていた


そして
新入社員が店に来る前日に店長から話があった


「明日の朝から一緒にやってもらうから、一通りの仕事の流れを教えて上げてな」
分かりましたと


もう新入社員の人が来るのか
早いな
しっかり教えて早く馴染んで貰おう
同い年やし仲良くしよ
そう思っていた
 
次の日
いつも通り8時前に出勤し
裏口から入ろうとすると
ドアの前に一人の男がいた

ラーメン物語10

「やっぱりフクモリさんやめときます」
コウヅキは言った


何故だ?
いきなり過ぎてびっくりした



「なんで?あんだけ張り切ってたやん?」
コウヅキの思いは嘘ではないことは
俺がよく知っている
理由がどうしても聞きたくなった


コウヅキ
「言いたくないです…」

「俺が帰った後に何かあったんか?」
コウヅキ
「・・・」
どうやら何かあったらしい
しかし
フクモリの言葉を思い出すと


二次会始まってすぐに帰った


こう言っていた
そんな短時間で何かあったのか?
俺はさらに聞いてみた



「どうした?」


コウヅキ
「・・・」


暫くの沈黙の後
コウヅキは話しだした


コウヅキ
「飲み会の後カラオケ行ったんですよ」

「うん、知ってるで。フクモリから聞いたけど、すぐに帰ったんやろ?」
コウヅキ
「・・・えっ?!」

「どうしたん?」
コウヅキ
「やっぱり○藤さんとフクモリさんは付き合ってますやん・・!」


はい?


まさかのびっくり発言
コイツは何を言ってるんだ?
誰かに何かを吹き込まれたのか?
それとも何か夢でも見てるのか?



「ちょっと待て!なんで俺とフクモリが付き合ってることになってんの?」
コウヅキ
「カラオケでフクモリさんはずっと○藤さんの事楽しそうに言ってましたよ」


なんだと?


コウヅキ
「僕、そんなフクモリさん見てたら絶対無理ってわかりますやん?だから嫌になって帰ったんです」

「ちょっと待て!ホンマに付き合ってないで?話がややこしくなり過ぎや!」
コウヅキ
「○藤さんも付き合ってんの黙ってて、僕の事面白がってたんちゃいます?!」

「だから付き合ってへん言うてんねん!」


何を言っても聞く耳もたん


コウヅキという男は
若いゆえの事もあるかもしれないが
かなり思い込みの激しい性格なのは
薄々知っていたが…
ここまでとは知らなかった


コウヅキ
「とにかく、○藤さんとは関わりたくないんです。失礼します」


電話は一方的に切られてしまった


こうなってしまったら
取り付くシマもない
こちらから連絡しても出ないだろう
バイト先で会うときあれば
直接話し合う事にしよう


次の日
俺はいつも通りバイトに出ていた
いつも通りに仕事をこなし
時間までしっかり仕事をこなす


仕事が終わりに近づく頃
店長が出勤してきた


「おはようございます!」
店長に挨拶をする


「おはようございます。○藤さんちょっと来てくれる?」
何やら神妙な面持ちで俺をバックヤードに呼んで来る


厨房からバックヤードに行き
店長と話をする


「どうされました?」
また正社員の話であろうか?
それならこんな真剣な感じで言ってこない


店長
「今日ねコウヅキから電話があったんだけど…」

「はい…」
何か嫌な予感がした
店長
「コウヅキがバイト辞めるって言ってきたんよ」


はい?


びっくりだ
まさかのびっくりだ
ここまでする?


店長は続けて話す
「理由を聞いたら、これ以上一緒にやりたくない人が出来たって言ってんのよ?」


俺の事やないか


店長
「○藤さんと仲良かったやんか?何か聞いてない?」


いえ
何も…


そらそうだ
まさか誤解とはいえ
女絡みで
しかも原因が俺だなんて
言えるはずもない


店長
「そうかぁ、深夜のバイトで出来る子少なかったから勿体無いなあ。ありがとう」


失礼しますと言い
厨房に戻る


・・・


まさか辞めるまでいくとは
思わんかった
誤解とはいえ
俺が原因と言うのも
後味悪い
可愛がっていたヤツだけに
やりきれない思いがあった


はぁ…


これからは
誤解を招くような軽率な行動を取らない様にしないとな


深く反省した一日だった

ラーメン物語9

あれから
コウヅキに会うことも無く
連絡も来ることが無い
いつもならこちらから連絡取らなくても
勝手に連絡が来るというのに


シフト表を確認してみる
コウヅキは今日は休み
ならば今夜にでも連絡取ってみるか


バックヤードで
休憩がてら色々と事務仕事をして
夜に向けて仕込みを開始するかと
厨房に向かった


お願いしまーす


注文が通った
ピークが過ぎたとはいえ
お客さんは来る
注文をこなしながら仕込みをしていくのだ


社員達は仕込みをしていき
俺がオーダーをこなす


注文を確認し
調理をしていく


○藤さーん!!


ホールの方から聞いたことがある声がした
声がした方に顔を向けてみると


フクモリとアラキがいた


飲食店のバイトあるあるなのか知らないが
休みの日に結構バイト達が食べにきたり
遊びにきたりする


ピークも過ぎてお客さんもほぼいないので
ホールへと出向き
二人に声を掛ける


「アラキさん、この前はありがとうな!どうしたん?二人して」


「こちらこそありがとう!休みエミ(フクモリ)と一緒やったから遊んでて、ここに来よーってなってん」
アラキは言う


なるほど


「言い出したんエミやねんけど!」
冗談っぽく笑いながらアラキが言い
「ちょっと○藤さん!早くラーメン持ってきてよ!」
フクモリが慌てて注文を急かす


今から作ってくるわと言い
厨房に戻る


アイツら相当な暇人やな


そう思いながらラーメンを作り
玉子とチャーシューをオマケに付けてやる


ラーメン上がります!

 


そしてホールのヒトミが
ハーイと言い
ラーメンを持ってフクモリ達の元へ行く


店が暇で
ヒトミも仕事をある程度
終わっているのもあって
フクモリ達の元で楽しく会話している


女は喋るのが好きな人種やな


オーダーを捌いた俺は
仕込みの続きに戻っていく


仕込み作業に没頭していると
ホールから声が聞こえてきた


「○藤さーん!ありがとうー!仕事頑張ってねー!」
フクモリの声が聞こえたので
おーありがとうー
と返す


そのやり取りを見ていた
オオタニチーフが
「○藤君人気者やなぁ!」
と言ってくる
「いや、そんな事無いですよー」
これは本心だ
逆に俺の事を忌み嫌ってる人間も確実にいる
すぐ近くにいるイモト氏だが
イモト氏は俺の事を
かなり嫌ってる
挨拶も返してこないし
仕込みも手伝ってくれない
何よりまず会話が一切無いし


オオタニチーフは
「フクモリさんは多分○藤君の事好きやでー?いかへんの?」
恐ろしい事を言う
「それは無いですよ!馬鹿にされてるだけですってー。フクモリは誰にでもあんな感じですよ」
これは間違っていない
フクモリは誰にでも愛想は良いんだ
オオタニチーフは
「まあそうやけど、イケそうな感じするけどな?あの乳は魅力的やで」
悪そうなやらしそうな顔をして言ってくる
確かにあの乳は良い
だが同じ職場の人間に手を出して
良いことなんか何もない
俺は笑いながら
そうッスねーと言い
仕込みの続きをしていく


仕事が終わり
家に帰り一息付いて
コウヅキに連絡を取ろうと思った


電話を手に取りコウヅキに掛ける


コウヅキ「もしもし?」


俺「おうコウヅキ」


コウヅキ「お疲れ様です。どうしました?」


俺「いやあの飲み会の後がどうなったか気になってな」


コウヅキ「いや別に何も無かったですよ」


何も無かったのは知っている
しかし
何故か声が暗い


俺「何かあったんか?」


コウヅキ「…」


どうやら
何かあったようだ


俺「どうした?」


コウヅキが話しだした

ラーメン物語8

飲み会の翌日
俺は朝から仕込みと開店準備をしていた 


それほど遅くまでいたわけではないが
やはり少し眠い
まあそれでも楽しかったから
良しとしよう


開店1時間半前ぐらいから
バイトやら社員が出勤し始める


「おはようございまーす」
 
社員のイモト氏とチーフのオオタニさんだ
おはようございますと 
挨拶を返す


スープの出来やら
仕込みの確認等で色々と話し合う
仕込みも一段落したので
少し休憩


バックヤードに行くと
ヤンキーのハルカとヒトミが
タバコを吸っていた
 
「おはようございまーす」
ハルカとヒトミが挨拶してくる


「おはよう!昨日はお疲れ!ありがとうな」


「いーえ、こちらこそ楽しかったッスよ」
「ホンマー、楽しかったー!」
ハルカとヒトミは笑顔で言ってくれる


タバコを吸い終えたハルカとヒトミは
手洗いとうがいをし
タイムカードを押して
ホールへと向かう


俺はバックヤードで
発注の段取りやらをしようとした


シフト表も確認しておくか…


シフトをざっと見てみる


フクモリは17時からか…


あれからコウヅキはうまくできたのか?
少し進展が気になった
まあ
コウヅキから何かしら連絡あるだろう


コウヅキのシフトは21時からラストまで
今日は会うことは無いが
また機会をみて聞いておこう


そして
仕事に戻り店が開店する


怒涛のランチタイムのピークが過ぎ
少し落ち着いて
夜に向けた仕込み作業に入る


実は仕込み作業は嫌いではない
無心になってできるからだ


そうこうしてる内に
17時前になる
もう上がりの時間だ
洗い物やら遅番から出勤してくる
店長に引き継ぎを済ませる


「…という事です!ランチの引き継ぎ以上です!よろしくお願いします!」
と店長に伝える
「はい!お疲れ様です!いつになったら社員になるん?」
店長は笑いながら言ってくる
「いやーそんな器じゃないっすよ」
と言って誤魔化し笑う
ほぼ毎日だ
もう慣れたが
店長は厨房からホールへと向かう
その時フクモリが出勤してくる
「おはようございまーす」
いつも通りの光景
「おはよう!昨日はありがとうな」
とお礼を言う


「エエよー!カラオケも楽しかったし!○藤さんも来たら良かったのにー」
フクモリは笑顔で応えてくれた
そこで俺は
「ちゃんとコウヅキに送ってもらった?」

軽く聞いてみた
「うーうん」
フクモリは顔を横に振る?
コウヅキは酒を飲んでないし
車で来たはずや
送っていけとも伝えたのに
「だってコウヅキ君、カラオケ始まってちょっとしてすぐ帰ったもん」


なんだと?


「明日学校早いから帰りますって」


なんじゃそら
せっかくお膳立てしたのに


そうなんやとフクモリに言う
今度詳しい事はコウヅキに聞くか
そして上がりの時間を迎え
フクモリは仕事に向かう


「また飲み会やってやー!お疲れー!」
笑顔で手を振りながらホールへと行く


何かアイツは軽いねんなぁ…
人の事言えんけど


ほんなら
俺も帰るか…


お疲れ様でしたーと挨拶を済ませ
仕事を上がる


なんでこの機会に
フクモリと親交を深めなかったのか?
それだけが少し気になったが


まあエエわ


ここまでしてんから
後は当人の問題や


明日も朝からや
気合入れていこう!!


そうして
帰路に付くのであった