ラーメン物語10

「やっぱりフクモリさんやめときます」
コウヅキは言った


何故だ?
いきなり過ぎてびっくりした



「なんで?あんだけ張り切ってたやん?」
コウヅキの思いは嘘ではないことは
俺がよく知っている
理由がどうしても聞きたくなった


コウヅキ
「言いたくないです…」

「俺が帰った後に何かあったんか?」
コウヅキ
「・・・」
どうやら何かあったらしい
しかし
フクモリの言葉を思い出すと


二次会始まってすぐに帰った


こう言っていた
そんな短時間で何かあったのか?
俺はさらに聞いてみた



「どうした?」


コウヅキ
「・・・」


暫くの沈黙の後
コウヅキは話しだした


コウヅキ
「飲み会の後カラオケ行ったんですよ」

「うん、知ってるで。フクモリから聞いたけど、すぐに帰ったんやろ?」
コウヅキ
「・・・えっ?!」

「どうしたん?」
コウヅキ
「やっぱり○藤さんとフクモリさんは付き合ってますやん・・!」


はい?


まさかのびっくり発言
コイツは何を言ってるんだ?
誰かに何かを吹き込まれたのか?
それとも何か夢でも見てるのか?



「ちょっと待て!なんで俺とフクモリが付き合ってることになってんの?」
コウヅキ
「カラオケでフクモリさんはずっと○藤さんの事楽しそうに言ってましたよ」


なんだと?


コウヅキ
「僕、そんなフクモリさん見てたら絶対無理ってわかりますやん?だから嫌になって帰ったんです」

「ちょっと待て!ホンマに付き合ってないで?話がややこしくなり過ぎや!」
コウヅキ
「○藤さんも付き合ってんの黙ってて、僕の事面白がってたんちゃいます?!」

「だから付き合ってへん言うてんねん!」


何を言っても聞く耳もたん


コウヅキという男は
若いゆえの事もあるかもしれないが
かなり思い込みの激しい性格なのは
薄々知っていたが…
ここまでとは知らなかった


コウヅキ
「とにかく、○藤さんとは関わりたくないんです。失礼します」


電話は一方的に切られてしまった


こうなってしまったら
取り付くシマもない
こちらから連絡しても出ないだろう
バイト先で会うときあれば
直接話し合う事にしよう


次の日
俺はいつも通りバイトに出ていた
いつも通りに仕事をこなし
時間までしっかり仕事をこなす


仕事が終わりに近づく頃
店長が出勤してきた


「おはようございます!」
店長に挨拶をする


「おはようございます。○藤さんちょっと来てくれる?」
何やら神妙な面持ちで俺をバックヤードに呼んで来る


厨房からバックヤードに行き
店長と話をする


「どうされました?」
また正社員の話であろうか?
それならこんな真剣な感じで言ってこない


店長
「今日ねコウヅキから電話があったんだけど…」

「はい…」
何か嫌な予感がした
店長
「コウヅキがバイト辞めるって言ってきたんよ」


はい?


びっくりだ
まさかのびっくりだ
ここまでする?


店長は続けて話す
「理由を聞いたら、これ以上一緒にやりたくない人が出来たって言ってんのよ?」


俺の事やないか


店長
「○藤さんと仲良かったやんか?何か聞いてない?」


いえ
何も…


そらそうだ
まさか誤解とはいえ
女絡みで
しかも原因が俺だなんて
言えるはずもない


店長
「そうかぁ、深夜のバイトで出来る子少なかったから勿体無いなあ。ありがとう」


失礼しますと言い
厨房に戻る


・・・


まさか辞めるまでいくとは
思わんかった
誤解とはいえ
俺が原因と言うのも
後味悪い
可愛がっていたヤツだけに
やりきれない思いがあった


はぁ…


これからは
誤解を招くような軽率な行動を取らない様にしないとな


深く反省した一日だった