ラーメン物語3

簡単な朝礼と自己紹介を終え
店長から声が掛かる
「とりあえずねぇ、人に付いて仕事覚えて貰おうか」
そう言われて
店長は大きい声で呼ぶ
「イモトさーん!」


ハイ!と返事しこちらに来る
「厨房担当のイモトさんね。この人から色々と教わって」
イモトさん
俺より一つ上の厨房担当
猫背で色白で根暗な物静かな感じである
正直苦手なタイプだ
イモトさんは静かに言う
「えーと…何をしてもらおうかな」


最初は洗い場とかなんやろなぁーとか
漠然と考えていた


イモトさんは
「じゃあ、半熟卵を作って殻を剥いて下さい」
半熟卵
ゆで卵はあっても半熟卵なんぞ作った事なんて無いぞ
半熟卵の作り方を教わる


鍋に入れられるだけの卵を入れる
水は卵が完全に浸る位入れる
強火で火にかけてから9分30秒で取り出す
一度水に入れそのまま水の中で殻を剥く
剝いた卵は水気を良く取る
煮卵のタレに2時間漬け込む


この一連の流れをこなすらしい
イモト氏曰く
多い時で300個位出るとの事


どれだけ玉子好きやねん
思わずツッコミそうになるが
ぐっと押さえる


でわ、よろしく


イモト氏は自分の持ち場へ戻っていく
さて仕事に取り掛かろうか


まずは卵を鍋に入れて水を入れて火に掛ける
タイマーを掛ける
その間に茹で上がった卵を剥く
これが案外難しい
何せお客さんの口に入る商品である
少しでも傷が付いたり
変な剥き方をしてはいけない
とにかく丁寧に剥いていた
タイマーがが鳴る
もう時間か
火にかけた卵を水に入れる
次の卵を火に掛ける
暫くすると
剥かなければならない卵が溜まっていた
ヤバイぞ
少しでも早くしなければ


ここでイモト氏が様子を見に来た


「どう?進んでる?」


俺の作業を覗き見る
イモト氏は
「おっそ!」


まさかの言葉である
確かに遅いかもしれないが
勤務初日の人間に掛ける言葉か?


すいません


俺はこう答えるしか無かった
さらにイモト氏は剝いた卵を見て
「何これ?こんなん売り物にならんやん」
そう言い
剝いた卵を一つ二つと捨て始めた
何をしてるんだ?!
人が一生懸命剝いた卵を!
「使えるのこれだけやで?もっと丁寧に早く剥いてな」
ボソッと言い
持ち場に戻る
俺は悔しくて泣きそうになった


なぜここまで言われないといけないのか?


確かにバイトとは言え
金を稼ぎに来てる身
立派な商品を作り上げなければならない
腹が立つ言われ方でも
正論を言われてる分 
悔しくてしょうがなかった


その後は
特に何か言われる事も無く
ただ黙々と半熟卵を作り上げていった


何とか初日は終了
同じ作業の繰り返しと
悔しさで疲労困憊であった


これ続くかな?


色んな不安が過る中


一日目が終わるのであった