デリヘル物語7

彼女から弟と二人で暮らし
風俗で働き初めた理由を聞いた


彼女の家庭は
父親が自営業をやっていて
母親は中学生の頃に離婚
それでもごく普通の家庭だったらしい


ある日
高校生だった頃
学校から家に帰ってみると
弟が家の玄関でうずくまっていたらしい


どうしたの?と聞いてみたら


泣いているだけ


弟を連れてリビングに行ってみたら


父親が首を吊って自殺していた


正直俺は引いた


彼女は続けて話す
自営でやっていた会社が借金で
首が回らなくなったらしい


暫しの沈黙


こういう時
どう声を掛けていいのかわからない
男として情けなくなった


テレビドラマだけのモノだと思っていた世界が
実際に目の当たりにした時の感情なんて
本人以外にわからない


彼女は言う


だから
何が何でも弟を大学まで
自分の力で出させてあげたいと


それが風俗を初めた理由であった


元々
看護師になった理由も
それが一番の理由であるらしい
弟が高校生になり
収入を増やさなければと
今回デリヘルを初めた


涙が出そうになった


彼女が歩んできた壮絶な人生と
好き勝手に歩んできた
自分の人生が情けなくなった事に対して


彼女が口を開く


ゴメン
何か暗い話になって…


そんな事はない
色んなことを話してくれて
ありがとう

言った


暫く他愛のない会話をし
ソコソコ楽しく過ごし


彼女を送っていき
家路につく


今日
短き時間ではあったが
物凄い濃厚な時間
色んなことを考えさせられた


世の中には
必死で歯を食いしばって生きている人間がいるんだ
そんな事を思っている内に
俺の中で一つの感情が生まれたんだ


俺は彼女を好きになってしまったのだ


これは間違いない
久々の恋である


会いたい
とにかく会いたい


しかし
当時は若くもあり
一つの葛藤があった


相手は風俗嬢


他の男に体を触られ
弄ばれている彼女を
胸を張って好きでい続ける自身はあるのか?


暫く悶々とした日々が続く