キャバクラ物語5

キャストの娘達を家まで送る
そう
これが「送り」である


それで車の通勤もオッケーなのか
なるほど


当時の俺は
アコードワゴンという車に乗っていた
中々の車である


どんな車か簡単に説明するとだな…


ベッタベタのズンドコ仕様


細かく説明するのも面倒くさいので
割愛する


「○藤君、3人お願いできる?」
先輩ボーイから声がかかる
「わかりました!こちらです」
キャストを案内する
俺の車にキャストを乗せる


黙って乗る
 
挨拶も無しか…
軽くイラッとした


それでも俺は仕事をこなそうと
平静を装った
 
「はじめまして!今日からの新人ですが、よろしくお願いします」



返事がない


「えっと…どちらから送りましょうか?」


A嬢「アタシ〇〇の駅まで」
B嬢「〇〇市の〇〇区の〇〇まで」
C嬢「今から遊びに行くから〇〇で降ろして」


幸い全て方向は同じ
場所的に
A→B→C
この順番で送ろうと思った


「では出ますね」


車を走らせる


出発してから数分経った


全く会話がない


沈黙が辛い
この時
キャスト達は何をしているのか?
それは


メール


恐らく今日来てもらった客へのメールだろう
光景はちょっと異常
恐怖すら覚える


そうこうしている内に
A嬢の送り先に到着


「お疲れ様でした!」


そう見送る俺
もちろん


挨拶なし


そうかそうか
なるほどな
イライラするな俺



次の目的地に向かう


すると
C嬢から


「なんであの子から送るん?アタシ今から遊びに行くって言うたやん?アホなん?」


あり得ん
こいつ
マジであり得ん
そんな事言われても
優しく切り返す俺


「場所的にAさんの方が先ですからね」
俺は忠実に仕事を遂行している
何も間違っていない


C嬢はこう言う


「知らんやんそんなん!その辺は要領よくやれや!使えんやっちゃなぁ」


C嬢は不貞腐れる
助手席に座っているB嬢は
我関せずと携帯をいじっている


そして
次の目的地に付く
B嬢を見送る


「お疲れ様でした!」


挨拶なし
もうエエわ


最後のC嬢を送る


C嬢と二人きりだ
もう会話無しでもエエわい
頼むから黙っててくれ
願い虚しく
C嬢が話しかけてくる


「あんたアタシがさっき言うた事聞いてた?ホンマにアカンやん?このボケ!」


後部座席で足を組んでタバコを吸い出した


頼む
死んでくれ


マジでこう思った


暫くして
最後の目的地に到着する


「お疲れ様でした!」


いくら腹がたっても
キャストは店の商品だ
しっかり挨拶をして送り届けよう


ガン無視されましたけどね


全て送り届け
大きく息を吐く


やっと終わった…


時間は3時過ぎ
送りが終われば直帰しても良しと聞いている


帰ろう
明日も仕事だ


夕方勤務で良かった


さて帰ろうと
車を走り出すと
携帯が鳴った


芦田からだ