キャバクラ物語4

正直この時の言葉の意味が
良くわからなかった
その時はあまり気にしなかった


店長からはキャッチに出ていこうか?と
指示される
渡されたインカム


ああ、見たことあるぞ
これで店と連絡取り合うんだなど
そして
芦田にキャッチのやり方を説明してもらう
一通りの説明をされ


「じゃあ頑張って」


この一言を告げられ
彼は店に戻り消えていった


完全に野に放たれた小ウサギ
とにかく声を掛けまくるしかない


「どうも!キャバクラロッ○です!いかがですか?」


こんな感じで声を掛けまくる
誰も聞いてくれない
立ち止まってもくれない
軽く精神崩壊


その時インカムから連絡がくる?
店長からだ


「お前がキャッチに行ってから客一人も来てへんで?どういうことかな?」


これが勤務初日の人間に掛ける言葉か?
精神崩壊寸前


「すいません!もっと声かけてみます!」


そう言うしかなかった
それでも諦めず声を掛け続けた


誰も立ち止まってくれない


何人の人間に声を掛けたか?
何度同じ言葉を発し続けたか?
何度罵声を浴びせられたか?


訳がわからない状態になっていた


ここから立ち去りたい
逃げ出したい
そんなことばかりが頭を過ぎる


「おつかれ!!」


振り向いたら芦田がいた


芦田「勤務初日にも関わらず、気合入れてキャッチしてるやん!!すごいなあ!」


俺「いや、それでも誰も店に案内できなかったんで…」


芦田「初日やから、しゃあないやん!中々開店から閉店近くまでできへんよー」


そう
気がつけば0時過ぎ
ただガムシャラに声を掛け続けていたんだ


「店に戻ってクロージングの準備をしようか」


ああ
やっと解放されるんだ
そして
店に戻ると
ほぼお客さんがいない状態
店長から


「お疲れ!」


笑顔で言われる
さっきと態度が違うことに
多少の驚きはあったが
仕事をこなしてないのだからしょうがない


芦田からクロージングのやり方の説明を受けながら仕事をこなし
やっと業務終了


そして
ミーティング


店長「お疲れ様です!!」


一同
「お疲れーっす!!」


応援団か


店長からは今日の売上の事とか
反省やらの話を聞く


「今月も半ばに差し掛かるけど、ノルマに達してないやつが大半や!どういうことや?」


ノルマ?
ああ女の子をスカウトね


「自分が担当してるキャストもちゃんと管理出来てんのか!?」


キャストを管理?
何だそれは?
聞いてないぞ


ミーティングが終わった後
芦田に色々と聞いてみた
「担当?しばらくしたらキャストを管理される様に言われるよ。愚痴聞いたり、勤怠、売上落ちてきたらアドバイスしたりとか」


なんだと?
そんな事が出来るのか
ますますお近づきになれるじゃないか!


ナイスな展開である


そんな思惑が
芦田に伝わったのか
彼はこう言った


「キャストに手を出したら罰金500万だから」


なんやと?


「キャストは店にとって商品やし、宝やからね」
その言葉を聞いて落胆した
あからさまに落ち込んでいたと思う
俺は疲弊していた
もう深夜の2時過ぎ
帰ろうと思った矢先に
店長から
「○藤君!送りよろしくね」


何の事だ?


「もう電車も無いからキャストの子を家まで送ってね!」


俺の出勤初日は
まだ終わらない